台湾駐在中に、貯蓄型保険を今一度勉強しましょう(その1)

日本の貯蓄型保険は悪なのか

先日「貯蓄型保険」で動画検索をしてみたところ、

・貯蓄型保険には加入しちゃダメ!
・生命保険で貯蓄絶対にやめて
・残念なお知らせ 貯蓄型保険は最悪です
・今すぐ解約して!貯蓄型保険 最悪な理由

まるで貯蓄型保険のネガティブキャンペーンのような様相で少し驚きました。商品内容をあまり理解せずに契約してしまい、後から「聞いてない」「知らなかった」という結果に陥る方が多いのかしれません。しかし通常保険販売員は、保険のメリットもデメリットもリスクも説明しているはずです。しかし我々はどうしても都合のいいことだけが記憶に残ってしまうこともよくあることです。今日は貯蓄型保険とは、そもそもどのような保険なのかをみていきましょう。

貯蓄+保険=貯蓄型保険

貯蓄型保険とは、その名の通り「貯蓄+保険」で、貯蓄ができる保険です。
貯蓄の意味は、財貨を蓄えることです。財貨とは、現金、銀行に預けている預金、株式、債券、不動産などの投資を指しますから、結局のところ運用です。ですから、貯蓄型保険とは、

保険会社に運用してもらいつつ、必要な保障も手配できる金融商品
(運用+保障=貯蓄型保険)

と言うことができます。

貯蓄型保険の運用

では次に、運用と保険をそれぞれみていきましょう。まずは保険会社は預かった保険料をどのように運用しているのでしょうか。主な運用先は債券です。そして債券の中でも最も大きな割合を占めるのが「国債」です。その理由は、保険会社は将来必ず支払いが発生しますので、過度なリスクを取った運用はできません。お金を貸して金利と元本を受取る運用ですと、おのずと運用リターンも限定的なものになってくるのはご察しの通りです。

バブル崩壊以降日本の金融政策は、金利を下げて景気回復を目指す低金利政策を進めてきました。金利が低いことは、お金を借りる人には良いですが、貸す側(融資をする銀行や預貯金をする消費者など)にとっては貰いが少なくなることですから良くありません。バブル崩壊以来債券金利は下げ続けてきましたが、これは保険会社の運用に大きな影響を与えました。つまり保険の「運用」リターンが、以前より低くなりました。バブル期以前に契約した保険を「お宝保険」と言ったりするのは、この二十数年で金利が大幅に下がったからに他なりません。

間接金融が当たり前で、金利もそこそこだった1990年代前半までは、貯蓄型保険で運用することにメリットもあったと思うのですが、最近ではインターネットが普及し、情報も取りやすくなりましたし、ネット証券を介して簡単に株式・債券や投資信託への直接投資がしやすくなり、運用の選択肢が増えました。しかし経済・投資教育を受けさせてもらっていないため、自己判断で間違った投資をしてしまったり、投資のつもりが投機になってしまっている方が多いのも事実です。

貯蓄型保険契約時の留意点

以上の経緯を踏まえ、貯蓄型保険を契約する際にまず考慮しておきたいことは、

・契約から満期まで期間、その保険会社に運用を任せる覚悟があるか。
・本当にその保障が必要か。

の2点です。

【運用】
一度契約がスタートし、満期前に解約すると、ほとんどの場合は高い早期解約手数料が発生し、元本割れします。低解約返戻タイプの貯蓄型保険ですと、更に早期解約は得策ではありません。ですから決めた満期まで必ず続ける覚悟が持てない場合は契約をお勧めしません。契約の段階で他の運用選択肢がある場合は、必ずリスク・リターンを比較検討してから決めるようにしましょう。

【保障】
貯蓄型保険を契約する方に、運用を主目的にしながら、「ついで」に保障も貰っておこう、と言った感覚の方が割と多いのですが、そもそも保険とは、保険会社に事務コストを支払って保障を買うことです。万が一に備えることができるのが保険のメリットですが、ほとんどの契約者はその保障を利用することなく終わるのも保険です。(ですから保険会社がビジネスとして成り立つわけです)保険は負けるギャンブルと言われる所以もここにあるわけですが、必要のない保障は、金融機関を喜ばせるだけですので、できることなら避けたいところです。

運用と保障を分けて考えてみる

従いまして、運用と保障を分けて考えることができれば、貯蓄型保険こだわる必要がない方もいらっしゃると思います。ご自身で証券口座を開設し、直接債券投資し、必要な保障は定期保険で手配しても同じようなことができるわけです。その方が流動性(お金の換金のしやすさ)も高いですし、保障は必要に応じていつでも変更もできますし、良い点もあります。問題を挙げるとすれば、自分で運用するので、投資先に対する知識が必要になります。

結論としては、貯蓄型保険自体が悪いというよりは、契約される方の目的と合致しないと問題が発生するということです。確かに最近の運用リターンそのものは、あまり魅力がないのは事実ですが、ご自分で運用ができない方であれば、預貯金よりはよいとも言えますし、保障を必要とする方もいるはずです。常々申し上げておりますが、保険を契約する際は、「目的」を明確にし、その目的達成に見合った保険を契約することがとても大事だと思います。

以上貯蓄型保険の特徴にについてみてまいりましたが、貯蓄型保険には、最近は円建ての他に、外貨建てのものもよく耳にします。預貯金より金利がいい、とか、円建てより利回りがよいといった理由ですが、果たして外貨建て貯蓄型保険なら本当に良いのでしょうか。次回このあたりをまとめてみます。

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