
元本保証の保険会社破綻
最近Premier Assurance Group SPC Limitedが清算手続きに入りました。設立者は、顧客から集めた投資金を私有化し、その発覚を免れるためケイマンからプエルトリコにドミサイル(本拠地)を移管しようとしましたが、ケイマン当局によってその証拠をつかまれ、保険ライセンスを剥奪・会社清算に至ったようです。
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https://www.labuanfsa.gov.my/general-info/investor-alerts/notice-on-the-official-liquidation-of-premier-assurance-group-spc-ltd-labuan-branch
Premier Assurance Groupを親会社に持つ保険会社プレミアトラスト(通称PA)は、2005年設立のケイマン諸島に籍を置く保険会社で、主に日本人、中国人向けに積立商品・元本確保型保険商品を案内しており、日本のファイナンシャルプランナー、保険代理店、税理士事務所などが扱っています。(弊社は取り扱いありません)
同社のドミサイル(本拠地)は、ケイマンからプエルトリコに移管済で、移管分はPremier Assurance Groupの清算手続きの影響を受けず、今なお営業できているようです。詳細は分かりかねるのですが、いずれにせよ預けた保険料が、わかりにくいお金の流れになっております。
プレミアトラストは、契約期間によって140~160%の「元本確保」が受けられる年金積立商品を販売しておりますが、これまでの低金利状況でこの保証が成立するのはかなり難しいです。そして同様の元本確保商品を提供する保険会社が他にも存在し、日本でも契約者が増えていると聞いております。その保険会社もプレミアトラスト同様、最近本拠地をケイマンからプエルトリコに移管しました。その必要性とは何だったのか、色々と勘繰りたくなります。
世界には星の数ほどの運用商品があり、偽物もあれば、素晴らしい金融商品もございます。しかし資・経済教育が遅れている日本では、その見極めができない方も多いため、そこを狙った投資詐欺は後を絶ちません。高い授業料を払うことにならないよう、最低限の金融知識は身に付けておきたいですね。今回は有名な投資格言と、投資詐欺の一例をご紹介します。
投資における唯一の絶対
「フリーランチはない」
有名な投資格言です。投資の世界に「絶対儲かる」とか、「ローリスクハイリターン」といった美味しい話はないですよ、という格言です。
投資で得られる(期待できる)リターンは、取ったリスクの対価です。ですからローリスクにはローリターン、ハイリスクにはハイリターンの関係性が変わることはありません。

投資詐欺の場合は、見かけはローリスクハイリターンでも、実際はハイリスクローリターン、もしくはノーリターンです。この「見せかけ」の部分を見誤ってしまうと、痛い目に遭うこととなります。
投資詐欺にも、はじめるタイミングによって被害を受けない場合、儲かる場合もありますが、通常はほとんどの方が損をし、あとになればなるほど被害が大きくなります。
下記は投資詐欺でよく目にするフレーズ例ですので、参考にされてください。
「月利3%の安定収益」
システムによる自動売買や、海外の仕組みを利用することで高収益が継続的に可能だと謳い、お金を集める投資詐欺は後を絶ちません。これは私がお客様から実際に相談を受けたことがございます、数年前まで稼働していた投資詐欺です。毎月3%、年利で36%以上を約束するなど常識的にあり得ない利回りですが、それでも信じてしまうのは、投資初期段階でのカラクリにあります。
まずこのような投資案件は、知り合いからの紹介がほとんどです。半信半疑でも、知り合いからの紹介のため断りにくいこともあり、とりあえず最小投資金額から始めます。いざ始めてみると、翌月から約束の配当が指定の口座にきちんと入ってきます。しばらく継続的に配当金が入ってくることで欲が出てきます。100万円なら毎月3万円、1,000万円なら30万円が毎月入ってくる計算ですし、お友達を紹介すると紹介料なるものも貰えたりします。(雪だるま式に被害者が増えていく仕組みで、ネットワークビジネスで広がるケースもあります。ネットワークビジネス、いわゆるMLMはマーケティング手法としては全く問題ないのですが、金融商品をMLMで販売することは違法です。)
そもそも運用などされてない場合がほとんどですから、自転車操業で資金が回っている間は、滞りなく配当金は振り込まれます。しかし資金がある程度集まり、詐欺グループが十分に資金を稼いだ頃合いに(通常3~5年ぐらいを目途に)、ある日突然配当金が振り込まれなくなります。そして問い合わせをしても色々な理由を付けられ、配当はもらえず時間だけが過ぎ、挙句は連絡すら取れなくなり、資金引き上げもできず投資案件は終焉を迎えます。
繰り返しになりますが、投資にうまい話はありません。過度のリターンを謳う投資は、逆に疑ってかかるぐらいの方がよいです。ちなみに年3%程度のリターンであれば、少し高利回りの債券で運用は可能ですが、月利3%を必ず保証するとなると、現在の世界の一般的な金利状況を考慮すると、まず不可能です。
「満期時140%保証」
冒頭でご紹介したプレミアトラストはまさにこの類の投資でした。
そもそも日本人は、「元本保証」とか元本確保」というフレーズにとても弱いです。できれば損をしたくないと思われる方にとって、最悪でもプラスマイナスゼロで済む「元本保証」は魅力的に聞こえます。しかし何かを約束するためには、それ相当の仕組みがあってはじめて成立します。
ちなみに、「元本保証」と「元本確保」は違います。元本保証は、契約後いつ解約しても元本が戻ってくることです。元本確保は、条件を満たした時に元本が約束されることです。
「満期時元本確保型」という仕組みがございます。少しリスクを取った投資信託などでよくあるタイプの運用です。これは満期まで保有し続けた場合のみ投資元本を保証します。途中解約、途中引出しした場合は保証されません。ここでは満期時元本確保の仕組みの一例をご紹介いたします。
まず初期投資金の8割程度を債券等の金利が約束された運用に回します。(下図A)こちらは満期まで運用すると、金利が上乗せされ10割に到達することが決まっています。そして残り2割分(下図B)は、レバレッジ(下図B’)を掛けてリスク資産で運用します。
B+B’分の運用が好調であれば、その時点のA分と合わせたものが解約金です。
B+B’分の運用が不調で、仮に満期前にゼロになったとしても、その後満期まで保有し続ければA分で投資元本は確保できます。もし満期前に解約すると元本割れとなります。

何かを約束(保証)するためには、必ず仕組みがあってはじめて成立します。そして運用の世界は「フリーランチはない」こともお忘れなく。もしご自身の運用でご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。