香港保険業界の番人-香港保険業監管局(Insurance Authority)

アジアのオフショア金融センター「香港」

香港は、ニューヨークやロンドンに次いでアジアを代表する「オフショア金融センター」としての地位を確立しており、経済自由度ランキングでは、過去25年間にわたり世界1位の座を保持してきました。世界有数の金融機関が多数進出し、競争が活発化している香港では、健全な競争原則が機能しており、多彩な金融商品が提供されています。

香港は、世界的に認められる金融センターとしての地位と信頼を保つため、法律や管理・監督も厳格に実施されています。今回は、香港の保険業界に焦点を当ててご紹介いたします。

Insurance Authority (保険業監管局)の役割

香港における保険会社と保険仲介業者は、「Insurance Ordinance(保険条例)」や保険を含む関連法令によって厳格に規制されています。現在は、独立した機関であるInsurance Authority(保険業監督局)が、保険業界の規制を担当しています。この機関は、日本の金融庁の監督局保険課に類似した役割を果たしています。

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2015年12月7日、香港では保険条例に基づき、保険業監管局が設立されました。この保険業監管局は政府や業界から独立した新しい保険規制機関であり、その設立目的は、香港の保険業界の安定的な発展を促進し、保険契約者により良い保護を提供し、国際的な規制基準を満たすための規制インフラストラクチャーの近代化を進めることです。

2017年6月26日には、保険業監管局は当時の保険委員会の規制機能を引き継ぎ、保険会社の規制を開始しました。そして2019年9月23日には、香港保険業界の保険仲介業者の規制を担当するため、以下の3つの自主規制機関(Self-regulatory Organizations, SROs)から業務を引き継ぎました。

  • 香港保険業界連合(The Hong Kong Federation of Insurers, HKFI)
  • 香港保険仲介業協会(The Hong Kong Confederation of Insurance Brokers, CIB)
  • 香港専業保険ブローカー協会(Professional Insurance Brokers Association, PIBA)

保険業監管局の主要な役割は、既存および潜在的な保険契約者の保護を確保し、保険業界の安定と発展を促進するために業界を規制・監督することです。ただし、保険会社の日常業務における保険契約条件や保険料率の決定などには介入しません。また、保険業監管局はこれまでの保険委員会の機能を引き継ぐだけでなく、新たな法的機能も保険条例によって付与されています。

これらの法的機能には、以下の項目が含まれます。

  • 保険業界の持続可能な市場開発の促進
  • 世界の保険市場における香港の保険業界の競争力の向上
  • 保険商品および保険業界の保険契約者および潜在的な保険契約者に対する理解の促進
  • 保険業界に関連する問題の調査と解決

保険業監管局は、香港の保険業界が国際的な信用を築き、国際競争に対応できる基盤を整備するために重要な役割を果たしています。

日本より多い保険会社

香港に進出している生命保険会社数、損害保険会社数を日本と比較してみます。

生命保険会社損害保険会社人口
日 本42551.2億
香 港5391750万

香港の人口は日本の約16分の1ですが、生命保険会社数、損害保険会社数、共に日本より多いですから、顧客獲得競争は相当激しいです。さらに香港域外・海外の外国人も顧客対象とするために、世界に通用する金融商品が提供できなければ、業界で生き残るのは難しいマーケットです。

保険会社と保険代理店の数

2020年6月30日現在、香港では165の保険会社(91の一般事業保険会社、53の長期事業(または生命)保険会社および21の複合保険会社)が認可されています。 これらの保険会社のうち、95社は香港で設立された企業であり、残りは21の異なる国/地域からのものであり、バミューダ(12)をはじめ、英国(10)と米国(9)がそれに続きます。

2020年6月30日現在、認可された保険代理店は2,398、認可された個人保険代理店は85,509、認可されたテクニカル代表者(代理人)は26,951です。 さらに、認可された保険ブローカー会社は827、認可されたテクニカル代表(ブローカー)は10,419です。

2019年の保険事業の保険料総額は、5,669億香港ドル(726億米ドル)でした。

一般事業では、事故・健康保険(33%)、一般賠償責任保険(23%)、物的損害(19%)、自動車(11%)事業が、2019年の総保険料の主な事業分野です。 2019年のオフィス保険料では、事業、個人生命保険(86%)が最も多く、年金(11%)がそれに続きます。 2019年末時点では、1,320万人の個人生命保険が施行されています。個人生命保険の施行が1320万人で、香港の人口を考慮すると、香港居住者以外の契約も多いことは容易に想像できます。

保険代理店と保険ブローカーの違い

保険代理店と保険ブローカーは、保険条例に基づきライセンスを保有する立場にあります。両者とも、保険会社と契約者の間で仲介役として機能し、アドバイスや手続きのサポートを提供するという役割を果たしています。しかし、保険代理店と保険ブローカーは、次の点において異なる位置に立っています。保険代理店は保険会社の代理人として活動し、一方、保険ブローカーは保険契約者の代理人として活動している点が異なります。

まとめ

香港において、保険業監管局(Insurance Authority)は政府や業界には所属せず、独立した機関として保険業界全体を監督・管理しています。

香港の主要産業が「金融」であるため、金融業界の信用を保つために厳格な監督が行われるのは当然のことです。その結果、香港では保険会社が過去に一度も破綻した事例がないのは理解できます。言い換えれば、大切な資産を預ける消費者としては、香港は信頼性の高い有利な地域と言えるでしょう。

保険に関するご相談や運用に関するご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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