台湾駐在中に年金に頼らない老後を目指す-人生100年時代に備えるべきこと

前回の記事で、昨年の年金2000万円問題を少し取り上げました。台湾在住の皆さんにも聞こえてきたニュースだったと思います。しかしながら、年金不足は最近に始まった話ではなく、以前からずっと言われていたことです。

そもそも2000万円という数字自体も、金融庁が総務省の「家計調査年報2017年」というデータをともに、高齢夫妻(無職)世帯の毎月の支出が、実際の収入よりも5.5万円の赤字家計になることを想定し、これが以降30年続く場合をざっくりと2000万円不足と言っております。

年金は本来厚生労働省管轄ですが、今回の報告書は、金融庁のものです。報告書の内容も、日本の金融システムに関する内容がほとんどで、年金について取り上げていた部分は、ほんのごく一部です。ですからむしろiDecoや直接株式投資を日本国民に促進したい金融庁が、わざとメディアに騒がせたのではないかと勘ぐりたくなります。

金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書

メディアの取り上げ方はさておき、私たちが将来、生活を十分に賄うだけの年金を貰える可能性はどうやら低いようです。不足額が2000万円かどうかは分かりません。この金額はあくまでモデルケースでの話ですから、実際不足する金額は人によって違います。貰える年金は、加入している年金や、今まで支払った年金保険料によって違いますし、必要な金額も、どのような老後を思い描くかによっても違います。老後にいくら必要か、具体的な金額をお知りになりたい方は、老後のライフプランニングを立て、様々な要素を加味して計算する必要があります。(老後のライフプランニングに無料個別相談できます。)

私たちが肝に銘じておくべきことは、繰り返しになりますが、国から給付される年金だけで老後の生計を立てていくことは難しいということです。サラリーマンの方は、昔のように勤め上げるだけで明るい老後が保証される時代はもう終わっていることを認識しておく必要がございます。そして若年層には、更に厳しい現実が待っているということです。

では何故そのようなことになっているのか、日本の年金制度の歴史からみていきましょう。

寿命が延びると・・・

国が国民に支給するものとしては、1800年後期には、軍人や公務員への「恩給」という形で存在していました。それがサラリーマンにも対象を拡大するため、厚生年金保険法が1944年に制定されました。(戦費の調達が本当の理由だともいわれていますが)ちなみにこの時の年金支給開始年齢は55歳です。

そして1954年には、この厚生年金保険法が改正され(支給開始年齢を60歳に引き上げ)、その後1961年に国民年金保険法で、国民が誰でも任意で年金に加入できるようになりました。(国民皆保険)

更に1986年には基礎年金法を制定し、国民は必ずいずれかの年金に加入することが義務付けられ、その流れで今も20歳になると皆年金に加入するわけです。

戦後当初、年金制度を整備していく段階では、日本人の平均寿命は60歳台でしたので、年金とは、現役時に40年ほど支払い、引退後10年程度受け取るものでした。しかしこの比率がその後平均寿命の延長により、劇的に変わっていきました。

戦後の復興と経済発展で、30年足らずで日本人の平均寿命は約25年伸びました。

年金はその方が亡くなるまでの保障ですので、寿命が延びれば、その分給付総額が増えることになります。ではその増加分を賄うのは誰かと言えば、賦課方式を採用する日本の場合は、働く現役世代です。しかしその現役世代、いわゆる生産年齢人口は、1995年より既に減少に転じています。つまり、

年金を必要とする人数が増え、(高齢化)

年金を必要とする期間が長くなり、(寿命の延長)

年金を賄う人の人数は減っています。(少子化)

このままでは立ちいかなくなるのは当たり前ですから、何かしらの調整が必要です。それは、

給付を減らすか、

年金保険料を引き上げるか、

またはその両方か。もう待ったなしの崖っぷちに日本の年金制度は来ていると思います。

老後のためにできること

現状の賦課方式を基本とした年金制度は、もはや機能しません。消費税を8%から10%に上げたところで、新たな財源は4兆円程度です。しかし毎年増える社会保障給付額は、2~3兆円ですのでもはや焼け石に水です。

年金制度は、まだまだこれから様々な改正がされていくと予想されます。そして改正されるたびに、年金を貰う側と支払う側の両者にとって改悪のはずです。できるだけ早いうちに、公的年金だけに頼らない老後のために行動することが重要です。私が考える明るい老後のための秘訣は次の3点です。

1 できるだけ長く働く

日本人の平均寿命は、今や男性は81.41歳、女性は87.45歳で(厚生労働省2019年まとめより)過去最高を更新中です。直近30年で、5.5年以上寿命が延びています。医療の技術革新や高齢者の健康に対する意識も向上しており、これからもまだまだ伸びるはずで、人生100年時代はもうすぐそこです。

もし60歳で引退する場合、老後期間は約25年、仮に毎月5.5万円不足するとした場合、不足分合計は、

5.5万円 x 12カ月 x 25年 = 1650万円

です。

そこでもう少し長く働いて、65歳で引退すると、老後期間は20年となり、不足分合計は、

5.5万円 x 12カ月 x 20年 = 1320万円

となり、330万円違ってきます。

5年長く働けると、60歳から65歳までお金を貯められる期間が長くなり、お金が出ていく期間は5年短縮されます。つまり例え1年でも長く働けると、不足分への影響は少なくありません。

2 少しずつでもいいのでできることから始める

では次に、65歳で引退すると仮定して、1320万円を作るために必要な行動です。

現在50歳の方が、65歳までに1320万円貯めるには、預金で運用する場合、

1320万円 ÷ 15年 ÷ 12カ月 = 7.33万円

今から毎月7.33万円を積み立てる必要があります。(ここでは分かりやすく金利はゼロで計算しています。)

もし早く開始できれば下記の通りです。

45歳からスタートなら、5.5万円/月 (1320万円÷20年÷12カ月= 5.5万円)

40歳からスタートなら、4.4万円/月 (1320万円÷25年÷12カ月= 4.4万円)

35歳からスタートなら、3.6万円/月 (1320万円÷30年÷12カ月= 3.6万円)

早く始められると、毎月の負担は軽くなります。

上記は金利ゼロで必要積立金額を想定しておりますが、もし金利が貰える運用でしたら、必要な積立金額はさらに軽くなります。詳しくは下記の過去記事をご参照ください。

ところで上記の計算はインフレを加味しておりません。

日本は年2%のインフレ目標を掲げた金融政策を行っていました。もし毎年2%のインフレが達成されると、お金の実質価値は、20年で3分の2、35年で半分となります。つまりお金は少なくともインフレターゲット以上の金利が期待できる運用でなければ、資産が目減りしてしまうので注意してください。

3 定年=引退と考えない

1の「できるだけ長く働く」と併せて考慮したいのが、定年=引退と考えないことです。インターネットで、「シニア・求人」等で検索いただくと、最近はシニア層向けの求職サイトがとても増えています。職種はある程度限定的ではありますが、引退後・定年後でも働ける環境は確実に増えています。

サラリーマンの方も、「定年後は年金生活」と考えるのではなく、定年後も身体が動くうちは、パートやバイトをしながら一定の収入を確保したり、またご夫婦であれば共働きで、できるだけ収入期間を長くするようにします。

また現役・引退後に関わらず、副業を持つことは、これからは当たり前の時代が来ると思います。もう新型コロナの追い風もあり、すでに来ているかもしれません。

そしてAIが進化してきたことで、私たちに求められる能力も変わってきていると思います。昔は多くの情報・知識を持っていることは一つの能力でしたが、今は情報は全てインターネット上にございますので、その膨大な情報データから必要な情報を、素早く検索する能力の方が重宝される時代に変わっております。自分がどう社会に貢献できるのか、そのためにどういったスキルを身に付けるべきかを見極めていかないと、社会に必要とされにくい時代になってきております。

長い、そして一度きりの人生が、お金に振り回されることがないよう、早いうちからできることをしておきたいですね。

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