台湾駐在員向け-仮想通貨の基本と、資産運用としての仮想通貨の可能性

最近ビットコインが過去最高値を更新した、というニュースが報道されてました。

台湾ではビットコイン等の仮想通貨は、中華民国中央銀行(台湾)・金融監督管理委員会に通貨として認められておりませんので、あまりニュースになることはありませんね。私自身も仮想通貨は保有しておりませんが、日本では最近仮想通貨をお持ちの個人投資家の方も結構多いようで、仮想通貨についての質問もいただくことがございます。外為証拠金(FX)取引の「ミセスワタナベ」になぞられ、仮想通貨に投資する日本人を「ミスターワタナベ」と海外金融機関は呼ぶそうです。知識のない日本の素人投資家を揶揄した言葉のようで、少し残念ですが、本日は仮想通貨の基本的考えと、資産運用との関係について書いてみます。

仮想通貨について簡単なおさらい

仮想通貨とは

仮想通貨とは、その字のごとく、「仮想」の「通貨」です。通貨なのですが、福沢諭吉の1万円札のような実物は存在しません。ですから「仮想」ということになります。しかしお金には変わりないので、通貨の単位は存在します。ビットコインならBTC、イーサリアムならETHといった具合です。しかし、

仮想通貨=電子マネー

は少し違います。我々が一般的に使う電子マネーは、円の紙幣や硬貨の代わりとして電子マネーを利用します。ですから自分が保有する円を電子マネーの端末に入金(チャージ)したり、支払いの際に利用する銀行口座にお金をいれておくことになります。一方仮想通貨は、それ自体が「仮想」ではありますが「通貨」なので、その仮想通貨で支払いや入金ができます。従って仮想通貨を受け付けてくれるお店であれば、モノやサービスと直接交換することが可能です。ただ残念ながら、仮想通貨での支払いを受け付けてくれる相手(お店)の数が圧倒的に少ないというのが、現在の仮想通貨の問題の一つと言えます。

仮想通貨の特徴

仮想通貨の円やドルとの決定的な違いは、管理する中央銀行が存在しないことです。例えば日本円であれば日本銀行が、米ドルであればFRBが、それぞれの金融政策のもと通貨発行量をコントロールし、通貨の信用を担保しています。しかし仮想通貨の場合は、発行や流通を管理する組織が存在しません。この「非常識」な概念が、仮想通貨の一番の特徴です。

中央組織が管理する代わりに、仮想通貨はコンピューターのネットワーク上で情報を管理する仕組みを取っています。新しい仮想通貨の発行や取引詳細情報のすべてが、ネットワーク上に保存されます。イメージは、誰もがいつでも見ることができる取引台帳が、ネットワーク上で可視化され、記録されているようなものです。(ブロックチェーン(分散管理台帳技術)により、同じ情報を持つ取引台帳が、ネットワーク上で分散して管理されています)その台帳を確認することで、いつでも仮想通貨の詳細がわかるので、管理する中央組織を必要としないのです。

そして仮想通貨は、個人間での直接送金が可能です。一般的な通貨の送金は、銀行などを仲介する必要がありますが、仮想通貨は直接相手側に送金ができますので、手数料もなくなりますし、煩わしい手続きや制限もありません。

一方デメリットは、現時点では、仮想通貨を取引通貨として受け入れている相手(お店)がまだまだ少ないということです。その理由の一つは、やはり新しい通貨の概念のため、信用が確立されてないためだと思います。中央銀行のような、発行体の信用という担保がないため、いくら利便性が高いと言えどもなかなか浸透していない事実は否めません。また現存する仮想通貨が多すぎるため、どの仮想通貨が今後残っていくのかも絞り切れません。ビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコインなどのよく聞くものからそうでないものまで、全部で1,000種類以上の仮想通貨が世界中にはあると言われています。最終的にはそのほとんどが淘汰され、皆にとって最も使い勝手がよいものが残るこった時に、ようやく利用価値が認められるようになるかもしれません。

投機対象としての仮想通貨

そして通貨として受け付けにくいもう一つの理由は、仮想通貨の価値(価格)がまだ定まっていないからです。仮想通貨は投機の対象となっており、非常に荒い値動きをしています。

もし皆さんが自動車ディーラーで、自動車を購入する顧客から、350万円の自動車代金として1ビットコインを本日受取ったとします。でも明日になると1ビットコインが300万円になってしまうかも知れないとしたら、ビットコインで代金での決済はちょっと考えてしまいますよね。つまり通貨価値が不安定すぎると、取引通貨としての利用対象にはなりにくいわけです。この不安定さは、「投機」としての対象となったとしても、通貨としての利用価値はまだまだ低いのが現状です。
ちなみに下記は、2016年頃からのビットコインの推移です。(1ビットコイン当たりの米ドル)

2014年から2021年1月18日までの推移(月足)

この5,6年の間に、下は1,000米ドルから上は40,000ドルの範囲で推移しました。(1月18日時点で約36,000米ドル)

そして下記は直近4日間のチャートです。下は34,000米ドル、上は40,000米ドルの範囲で推移しています。たった4日の間に±15%も上下しました。

2021年1月18日時点(1時間足)

円や米ドルといった通貨であれば、よほどのことがない限り、これほどにまで極端に暴落(暴騰)することはありませんが、仮想通貨においては、日頃当たり前のようにこのような上下が繰り返されます。

「投資」という資産運用にはならない仮想通貨

結局のところ、このように上下変動幅が大きいと、その分大きなリターンが期待できることになり(もちろん逆に損失も大きくなりますが)、投機対象としては非常に魅力的なわけです。必然的に投機目的の短期資金が更に入ってきやすくなりますので、更に上下変動しやすくなります。つまり通常の商売や取引における決済手段としては、まだまだ利用勝手が悪いのが現状です。

投資と投機の違いについては、別記事でもご説明差し上げている通りです。(下記参照ください)

 

仮想通貨は、現状では投機対象としての側面が圧倒的に強く、しばらくは現在のような激しい価格変動は続くものと思います。ただ仮想通貨によっては、発行上限がありますので、発行予定分が全て発行し終わる頃、もしくはそれより少し前ぐらいには、ある程度の価格が定着してくるのかもしれません。例えばビットコインであれば、2140年に全ビットコインの発行が終わります。1BTCが1米ドルになるのか、5万米ドルになるのか、現在は色々な思惑の中で参加者が予想し価格が上下しておりますが、いつかある一定の価格に落ち着くことになるはずです。
また現存する1,000あまりの仮想通貨が、全部残るとは思えませんので、世界中の人々にとって使いやすい、いくつかの限られた仮想通貨に淘汰される可能性は高いです。そうなれば、仮想通貨の価値が安定し、投機目的というより、本来の目的である利便性が重視され、通常の決済取引においてもっと利用されるようになるかもしれません。ただ仮想通貨は、モノをやり取りする際の手段である「お金(通貨)」です。仮想通貨自体に価値はありません。(仮想なので紙きれすら残りません)ですから最終的に仮想通貨が残るのかどうかも、我々人間がどのように取り扱うかによるところも大きいです。

上がるかもしれない、今後も残るかもしれない、と予想して仮想通貨に出資するのは、「投資」ではなく「投機」です。そして投機は、機を見てお金を入れる、つまり奪い合いの資産運用です。もしもあなたがが億り人になれたとしたら、どこかの誰かがその分損を被り不幸になっている可能性がございます。また奪い合いですから、あなたがが負けて、全部奪われてしまうリスクもございます。 向こう側の見えない相手は、1秒間に何千回もコンピューター取引ができるような、24時間奪うことだけに命を懸けているプロ集団だということもお忘れなく。

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