なぜ香港にある保険会社の多くが、バミューダ籍や外国籍なのか-その理由を解説します

香港の保険会社は4割が外国籍

アジアの金融センター、香港には165の保険会社が登録されており、その内68社が外国籍保険会社です。その中でもバミューダ籍の保険会社が最も多く、以下の12社が挙げられます。

バミューダ籍の次に多いのがアメリカ・イギリス籍で全国籍は下記の通りです。

  • ベルギー・ガンジー諸島・インド・イタリア・日本・フィリピン・南アフリカ・スペイン:各1社
  • 中国・フランス・ノルウェー・アイルランド・スイス:各2社
  • カナダ・シンガポール:各3社
  • ルクセンブルク:4社
  • ドイツ・マン島:各5社
  • イギリス・アメリカ:各9社

これら68の外国籍保険会社は、全て香港の保険ライセンスを有し、香港にオフィスを構え、香港の保険条例に従い、香港の保険業監管局の監督下で営業をしております。

ではこれら保険会社が、あえてバミューダ籍として、外国籍保険会社として香港で営業する理由は何なのでしょうか。その答えは、歴史の中に1つ、そして現在の香港情勢を踏まえて1つ挙げることができます。

理由1:かつては相続税対策

15年前に香港で相続税が廃止される以前、香港では資産の相続に際して相続税が課税されており、香港内の資産だけでなく、香港で契約された保険の死亡保険金にも相続税が適用されていました。しかし、外国保険会社の保険契約は香港外資産とみなされ、相続税の対象外であったため、多くの保険会社がバミューダ、スイス、マン島、ルクセンブルクなどのオフショア地域を本拠地として登録し、香港人の相続税回避を支援していました。特にバミューダは、元々イギリス植民地であり、Common Lawが適用されていたことや、生命保険に特化したオフショア地域として保険会社に利用されました。

現在は香港での相続税が廃止されたため、オフショアの本拠地(ドミサイル)が相続税に与える影響はなくなりました。しかし、その歴史的経緯から、バミューダ籍や他国籍の保険会社が香港に多く存在し続けていることが示唆されています。これは、過去の税制や相続法の影響を受けつつも、現在でも保険業界におけるバミューダなどのオフショア地域の特性が保持されているためと考えられます。

香港相続税こばなし

香港では、相続税が完全に廃止されたののは2006年2月11日からですが、その前の移行期間、2005年7月15日から2006年2月10日までの間には、資産が750万香港ドルを超える場合に、100香港ドル(約1400円)の相続税が課税されました(もはや無意味に近い金額ですが)。

ちなみに、2005年7月14日以前は、従来通りに相続税が課税されており、被相続人の死亡日が2005年7月14日か15日かによって、その財産の運命が大きく変わる緊張感を感じた方もいたことでしょう。当時の人々が、まさに天国と地獄の間でドキドキしたことを想像してしまいます。

香港が相続税を廃止した理由は、香港市民や海外の投資家がより容易に投資を行える環境を創出し、香港の資産運用事業と金融セクターの発展を促進するためでした。相続税廃止の後、多くの富裕層や企業が香港を拠点とすることとなり、香港はアジアで最も優れた金融センターの地位を築くことができました。資金は、まさに「経済の血液」とも言えるものであり、活発な投資や事業活動を通じて流れることで、国の経済発展や個人の繁栄に大いに貢献する要素となるのでしょう。

理由2:今は政治リスクの回避

最近では、オフショア籍や外国籍であることが相続税の面でのメリットは薄れましたが、別の観点での利点が注目されています。それが「政治リスク回避」です。

最近の中国政府による香港への過度な政治的干渉に対し、香港の将来に不安を抱く人々が増えています。しかし、事実として、香港は1997年7月1日にイギリスから中国に返還され、中国の一行政区として経済発展を遂げてきました。私見では、中国と香港の関係や体制が大きく変わることはないとの予想もありますが、このような政治的な不透明さを回避する手段として、バミューダ籍や外国籍を持つことが今や一つのアドバンテージとされています。

まず、バミューダや海外籍の保険会社を選ぶことで、中国政府の直接的な干渉から逃れることが可能です。また、保険会社は通常、保険料を金融資産に変えて運用しており、香港や中国内での資産保有は限られています。たとえば米ドル建ての保険商品であれば、米ドル建ての金融資産で運用されています。このため、中国政府による資産の没収といったリスクも軽減されます。現在では、中国の政治的リスクを回避する手段として、バミューダや外国籍の保険会社を選ぶことに意味があると言えるでしょう。

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